極道の末に盲目の乞食に身を落した元馬喰の一代記、その色働悔ともいうべき物語。民俗学者の宮本常一氏が土佐梼原村(ゆすはら)の橋の下で実際に本人から聞いた話(昭和十六年)をもとにしたもの。 私生児として月足らずに生まれた生いたち、人を騙し儲けなければならない馬喰渡世の日々。そして何人もの"かもうた女ご”の中でも、特に忘れることのできない二人の女ごとの思い出。それはこの老人にとって一番の真実でもあり、財産でもあった。優しかった女ご達のことを思い出して老人は言う。 「男ちゅう男はわしのことを信用せんかったがのう、どういうもんか、女 ごだけは皆わしの言いなりになった。わしにもようわからん。けんど男が皆女ごを粗末にするんじゃろう」「わしはなあ、人は随分騙したが、牛だけはウソがつけんだった。女ごも同じでかまいはしたが騙しはしなかった」素朴な語り口の中に凄絶な老人の生き様と、男女の間の機微、明かすことのできの秘め事を抱えた女の切なさ、その女を想う男の優しさがあふれている。 老人の魂が、役者坂本長利に宿る、一時間十分の作品。 昭和四十二年、新宿にあったストリップ小屋の幕間狂言に始まり、自ら「出前芝居」と称し、全国各地をめぐって演じ続けてきた独演劇である。 |