岩手山が迎えてくれた


 七月七日
 秋田県八幡平(はちまんたい)公民館の館長村木哲文さんが盛岡駅にむかえにきて下さった。電話の声から想像していたよりも大きな体の方だった。
 公民館の車で高速を鹿角市に向った。途中富士山に似た岩手山が角度によって様々な姿をみせてくれた。村木さんのはなしだといつ噴火するかもわからんのでいまは近づくことが出来ず登山出来ないのが残念だとこぼしておられた。
  “ふるさとの山に向ひて言うことなし
      ふるさとの山はありがたきかな”
 啄木の詩がすぐにうかんできた。
 村木さんには、今日の日をむかえるまでに、なんべんもお電話をいただいた。多くのご苦労があったことをおもうと、ありがたかった。公民館の新規の事業「かづの地域文化創造講座」の第一回に「土佐源氏」を呼んでいただいたのだ。
 会場がまた素晴らしかった。正月二日に「大日堂舞楽」が奉納される大日霊貴(おおひるめむち)神社「大日堂」の広い天井の高い堂内が会場でゴザを敷き、座布団を持参の二百人のお客さまが観に来て下さったのだ。
 東京の人々にも、是非こんな場所でみていただきたい
ものと、強くおもった。運営委員の方々に舞台の仕込みを手伝っていただいて、ふんいきは最高だった。村木さんや運営委員の方々に心から感謝を申し上げたい。
 七月十四日
 愛知県安城市のギャラリーがらんどうが会場。がらんどうに着いてみると、すでに舞台が出来上がっていた。こんなことははじめてだったのでおどろいた。宮本常一先生の本を読んで創造したものがこれだったといってみせられたのは、まさしくあの馬喰爺さんが住んでいたであろうとおもわれるようなワラ小屋が実にうまくつくられていた。
 開演時間がほんの少しおくれたのは、がらんどうの店の前を犬をつれた近所の婦人が通りすがって、なにがあるんですかときく。これこれの芝居があるというと、それでは犬を置いてみにきます。でなにを着てきてもよいのにちゃんと着替えてこられたそうで、そのため少し開演がおくれたということをあとできいたとき、なんだかとてもいいはなしのようにおもえてうれしくなった。

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