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綱 渡 り 人 生


 
  このたび、旅の文化賞というのをいただいた。
「土佐源氏」を三十年演じて1015回。ライフワークとか、1000回演(や)ろうとかをねらったわけではなかった。
 ただ演りたかったから演ってきた。
 お客さまから注文はくるからやれたんだ。
それに役者なら役者の仕事を毎日演っていたいとおもったからだ。
 あらためて資料をしらべてみると、よくぞあっちこっちと飛び歩いたもんだと、我ながらおどろく。
 ペルー、ブラジルの公演に行った1979年(昭和54年)には101回も演っている。
ポーランド、スウェーデン、ドイツ、オランダ、ペルー、ブラジル、デンマーク、イギリス、バリ島。国内は北海道から沖縄まで。全国、海外いたるところが俺の劇場だった。
 郵便配達の人が雨風の強い日にエレベーターもない
 古いマンションの四階の部屋まで速達便を配達してくれるー雨合羽から雫、顔もびしょぬれの配達夫がドアの前に。自然と感謝の気持ちが湧いてきて、ドアを手で押したまま頭をさげて「おつかれさまです」と声をかける。
 俺も、人々の心になにかを配達する仕事なのだ。
 普段は劣等感ばかりの人生。遊びの方もカラキシだめ。マージャンなどの賭けごとも。ゴルフなどもやろうとしないから、つきあいもヘタ。恋もしょっちゅうしているのだが損ばかり。タバコはやるが、酒は一年中なければないで平気だ。つきあい酒をやる程度。自分でもつまらない面白くない人間であるとおもっている。
 それでも舞台という虚構の世界でなら狂える。俺は虚構の世界でしか生きられないのか。
 これまで役者をやめようとおもっったことはない。でも俺は本当に役者の仕事が好きなのだろうとか、本当に才能があるのだろうかとか、ひょい、ひょいと考えこむことはある。えーい、いっそのこと頭カラッポにして念仏となえて踊り踊っていのち尽きるまでどこまでもどこまでも歩きつづけて、そのうちに大きな石にでもケツまづいて転んでそのままあの世行きか。目が覚めてみると手になにかをつかんでいるか!
 綱渡りしながらこんにちまで生き恥さらして演ってきたのだし、好きなことやってどうにか喰べていけてきた。ほかになにをのぞもうぞ。
 もう少し生きていこう。そうしたければなにも発見出来ないままおわりということになる。人さまより十年はおくれているのだから、そのぶん人さまより長生きしなければ。
役者という仕事は果てもないものだから。

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